新・トラウマティック銀幕:女王陛下のお気に入り
18世紀のイングランドはフランスと交戦中だ。
女王のアンは病気がちで、重要事案の決定はすべて側近のサラに任せている。
ふたりは幼なじみの間柄で、専横的なサラはアンを意のままに操ろうとする。
女王アンとサラの関係がぎくしゃくする中、サラのいとこのアビゲイルがやって来る。
家が没落したため当初サラには相手にされず仕方なく台所女中をやらされる。
でも、薬草の知識を活用してアンの中風の足を治療し、念願かなって女官に。
戦争継続を謳うホイッグと、反戦を唱えるトーリーで議会は荒れる。
トーリー党代表のハーレーはアビゲイルを利用して女王に取り入ろうと画策する。
一度は断ったものの、サラから女王のお気に入りの座を奪いたい彼女は…。
この英国版大奥はてっきりヨルゴス・ランティモスが創作かと思ったけど、
実はけっこう史実に基づいているのが驚き。でもまあ、彼独特の世界だったけど。
アンのオリヴィア・コールマンとサラのレイチェル・ワイズはロブスター組。
アビゲイルのエマ・ストーンは清純派を脱皮してまさかのぶっ飛び怪演。
この三人がドロドロに絡み合い、くんずほぐれつの演技合戦。
エマに軍配をあげたいけど、レイチェルの男装はオスカルみたいでカッコイイ。
トラ銀ポイント:ゲロッパ
アン女王はお菓子の食べ過ぎ、サラはアビゲイルに毒をもられて、
アビゲイルは見事に貴族の花嫁となって祝い酒の飲み過ぎで。
だいたいその行先は金襴手の蓋つきの壺。日本の伊万里とか柿右衛門が~。
新・トラウマティック銀幕:サスペリア
〈サスペリア〉
1977年ベルリン。スージーが単身アメリカからやって来たのは、
コンテンポラリー・ダンスのマルコス・カンパニーに入団するためだ。
オーディションでの圧倒的なパフォーマンスでマダム・ブランに入団を許可される。
さらに、ちょうどひとり欠員ができたために団員の寮にも入れることになる。
すぐに仲良くなった隣室のサラは欠員となった親友のパトリシアが心配でたまらない。
警察には反政府活動をする友人と行動を共にしているのだろうと舞踊団は説明した。
でも、サラは信じられずに事務所に入ってパトリシアの名簿を探すが見つからない。
パトリシアの代わりにセンターを指名されたオルガはマダムや舞踊団に不満をぶつけ、
退団すると言ったままどこかに消えてしまう。そして、スージーがセンターになる。
この2018年版を見るために1977年版も久しぶりに見直した。
新バージョンの良かった点はダンスを重点的に描いたところと
マダム・ブランのティルダ・スウィントン(あと二役は彼女の余技かお遊び)。
芸術に魂を捧げ、魔女に魂を売る。矛盾と葛藤と苦悩。
スージーのダコタ・ジョンソンは踊りもいいけど脱ぎっぷりもいい。
ナチスの傷跡が残る冷戦下のベルリンとスージーが生まれた米国のアーミッシュ村。
リメイクにあたって監督は相当気合を入れたんだろなあ。盛り込みすぎというか…
得体の知れない謎のまま説明しない潔さ。古いバージョンのほうがやはり遥かに怖い。
トラ銀ポイント:指切りげんまん
スージーとサラが約束よって、お互いの小指を絡ませる。
てっきり日本だけの習慣かと思ってたんだけど…インターナショナルなのね。