トラウマティック銀幕 陽炎座
原田芳雄は不死身だと思っていたのに…。告別式の遺影を見てつくづく思った。
個性や演技や存在感ばかり言われるけど、惚れぼれするくらい男前だったのよ!
今ごろあの世で藤田敏八監督のもとで松田優作と映画で共演しているかも。
でも、鈴木清順監督はまだまだ呼ばないようにね!
<陽炎座>
新派の劇作家の松崎は女性からの手紙を落としてあちこちを探している。
丸髷の美しい女性が彼に声をかける。
病院の前でほおずきを売るお婆さんが怖くて、ひとりでお見舞いに行けないと言う。
老婆は女の魂を拾い集めてほおずきにする、見舞う病人は助からないと告げたらしい。
松崎は不審がる。女が手にしているのは墓場の供花だからだ。
老婆の姿も見当たらない。病院まで行くが女は病人を見舞うのをやめる。
そして、松崎に手紙とほおずきを渡す。
「あなたの魂をいただいたと思ってもいいんですね」と松崎。
謎のほおずきの女の話をパトロンの玉脇に話すと、興味をもたれる。
一夜をともにしたという話を聞くと急に様子が変わる。猟銃を松崎に向けたりする。
ある日、松崎は病院前の石段に行ってみると、ほおずきの女と似た着物姿の女がいる。
思わず声をかけて人違いだとわかったが、女は玉脇の妻いねと名乗る。
その話を玉脇にするとおかしいと言う。妻は病院で危篤状態だから。
ふたりで病院に行くと、松崎が会ったその時刻にいねは死んでいた。
自分が会ったのは誰だったのか不思議がる松崎に、下宿の女主人の美緒が教える。
「玉脇には奥さまがふたり」ドイツ人の本妻と伯爵の娘で高級娼婦と噂される二号。
死んだのはドイツ人の方で、自分と関係を持ったのは二番目の妻なのか。
松崎のもとに手紙が来る。金沢の夕月楼にて待つとの女からの手紙。
玉脇のもとで小間使いをしていた美緒は警告する。「行ったら、あなた殺されるわよ」
松田優作はこの映画から演技派に脱皮していったらしい。
そんな不安いっぱいの優作を元気づけるかのような原田芳雄の共演場面。
祭り好きのアナーキストで、フリーメイソンみたいな人形裏側愛好会のメンバー。
メンバーには大友柳太郎さまもいて、重厚かつ味のある演技を原田芳雄は受けとめる。
強烈なアウトローの主演もいいが、共演者を盛りたてる素晴らしいバイプレーヤー。
すごい演技がいっぱい残されているから、ずっとずっと忘れないでいられるよ。
本作は泉鏡花の原作というのもあるけど、やはり謎だらけの清順ワールド。
子供歌舞伎、血みどろ絵のバック、ヘリウムガス的声など仕掛けがいっぱい。
入水した大楠道代の口から身体から無数のほおずきが浮かびあがるシーンは絶品!
今回のトラウマは松田優作のギクシャクした動き。初の清順映画で硬くなってるのか?
汽車の一等客室のセットでひとりだけものすごく大袈裟に揺れる。ほとんどコント。
ギャグなのか、笑いをとろうとしてるのかどうか、迷ってしまったじゃないか!