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トラウマティック銀幕 さらば、わが愛 覇王別姫

レスリー・チャンが亡くなってもう久しいのに、まだまだ哀しみは癒えない。
特にこの映画は主人公と彼自身の苦悩を重ねてしまうので、長らく敬遠してきた。
でも、そろそろ観てもいいかなあって気持ちにだんだんなってきた。

さらば、わが愛 覇王別姫



1924年、北洋軍閥時代の北京。
京劇の劇団に母子が来る。息子の入団を願うが断られる。手が六本指だからだ。
でも、母は妓楼の女で息子を手元には置いておけない。
息子の六本目の指を包丁で切り落として、母は無理やり入団させる。
娼婦の息子としていじめられるその新入り・豆子を何かとかばうリーダー格の石頭。
豆子はしだいに石頭に友情以上のものを募らせて行く。
関師匠の体罰を伴う教えは壮絶で、ある日とうとう豆子はサンザシ好きの友人と脱走。
街の劇場で見た<覇王別姫>に涙。「どれほどぶたれれば、こんな名優になれる?」
劇団に戻ったふたり。先に仕置きされる豆子は半殺しの目に会いながら謝らない。
一緒に逃げた友は責任を感じ、サンザシを口いっぱいにほうばり自殺する。
自分を激しく責める豆子は、それ以来、芸に打ち込むようになる。
芸を宦官の張氏に認められ、無理やり手篭めにされた後、石頭とともに贔屓にされ、
やがて成長して京劇スターとして、絶大な人気を博すようになる。
「一生、共に芝居を」という豆子改め程蝶衣、妓楼の女菊仙に夢中の石頭改め段小楼。
二人の気持ちがすれ違うようになり、蝶衣も贔屓の袁世卿のなぐさめものとなる。
やがて日本軍侵攻で劇場に日本兵があふれ、些細な事で兵に乱暴して捕まる小楼。
蝶衣は日本軍の宴席で舞って小楼を助け出すが、「日本兵は芝居が好きだ」と言って、
小楼に唾を吐きかけられる。銃殺される中国人たちのことがわかっていないからだ。
小楼は菊仙と結婚して芝居から身を引き、蝶衣はアヘン中毒に。
二人を再び結びつけたのは関師匠だが、子供達の演劇指導中に卒中で亡くなる。
日本降伏により民国兵の前や人民解放軍の前での京劇はもはや時代遅れに。
やがて文化大革命が起こり、京劇役者は反動分子とみなされ、仲間の罪の暴露合戦。
小楼も蝶衣を裏切って彼と粛清された袁世卿の仲を、蝶衣は菊仙は元娼婦だと暴露。
保身のため菊仙本人の目の前で小楼は「あいつとは別れる」。菊仙は首をつって自殺。
それから11年ぶりに再会した二人、劇場を借りて「覇王別姫」の稽古をする。
クライマックスの場面、覇王の目を盗んで刀を奪った虞美人は…。

女形として芸に打ち込み、自分が女か男かわからなくなっている豆子。
コン・リー扮する菊仙と一人の男をめぐって、熾烈に火花を散らし、
生身の女にはどうしても勝てない悔しさと寂しさ。憂いを帯びた瞳とたおやかな仕草、
レスリーの絶世の美女・虞美人はまさに息をのむ美しさ。
小楼はチャン・フォンイーで、いいやつだけど俗っぽくて意志が弱いのが巧みだ。
コン・リーの菊仙は女の魅力だけでは勝てない蝶衣に、敬意を表しつつ闘ってたな。
子役時代を演じる二人の豆子が麗しく、みんなと一緒に河原で歌う姿が涙を誘う。
今回のトラウマは劇団の関師匠。芸のためなら蛇となる鬼となる。星一徹も負ける。
大人になった小楼と蝶衣もやっぱりお仕置きしちゃう。ブレないあんたは偉い!