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トラウマティック銀幕 尼僧ヨアンナ

てっきりホラー映画だと思っていた。
ちょっと前に観た‘妖婆 死棺の呪い’みたいなものかと。
昔に見た、完全に憑かれちゃっている尼さんのこわ〜いスチール写真のせいです。

<尼僧ヨアンナ>

17世紀のポーランドの北部の辺境の地、ある宿屋に一人の神父が泊る。
宿の男達は近くの尼僧で恐ろしい出来事が起こっているのを噂し合う。
その神父こそ新たにその尼僧院に赴任し、院長のヨアンナの悪魔払いを行うのだ。
着任前のこのスリン神父は不安からか、祈りを絶やさない。
宿屋の納屋番のカジュークが供をし、スリンは尼僧院へと向かう。
その男は尼僧院での雑用もこなすと言い、尼僧院へ男が立ち入るのかと問う神父に、
羊や豚を食用に殺すためだと答える。淫らな行為をする尼僧たちはまた肉食らしい。
院長のヨアンナは、かつて人々から天使の尼僧と言われた美貌の持ち主だ。
悪魔使いのガルニェツ神父が尼僧院の壁を通り抜け、ヨアンナを陵辱して悪魔憑きに。
ガルニェツは火刑に処せられたが、それ以来ヨアンナ以下の尼僧も乱行を繰り返す。
スリンら5人の司祭により、ヨアンナに憑りついた8人の悪魔を払う儀式が行われる。
2人は払えたが、まだ悪魔はヨアンナを解放しない。残りはスリンに委ねられる。
次第にヨアンナに魅かれていくスリンは、己の体を鞭打っては戒める日々が続く。
苦悩するスリンは悪魔の正体をユダヤ僧に尋ねるが、満足な答えは得られない。
ヨアンナは涙ながらに訴える。「わたしを聖女にして下さい」
スリンはその願いを叶えようと…。

原作は実話に基づくらしいけど、これは宗教映画ではない。
ポーランドは戦時中はナチ支配を受け、戦後はスターリン圧政下に苦しんだ。
悪魔という毒を注入され、なすすべもなく狂気のままに動かされる苦悩。
肺病か結核に冒され疲弊している神父も、悪魔と闘うにはあまりにも弱々しい。
悪魔に操られている他の尼僧たちは傍観者だ。事の深刻さがわかっていない。
悩むのはヨアンナひとり。ある尼僧は災難に陥って初めてヨアンナの苦悩がわかる。
当時のポーランド国民を暗喩しつつ、批判の矛先は隣国の東欧諸国にも及んでいる。
観ていてあまりに痛々しい、どうしようもなくやるせない映画だ。
今回のトラウマは一人クルクル回る尼僧。ヨアンナの次に憑かれているな。