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トラウマティック銀幕 丹下左膳餘話 百萬両の壺

山中貞夫の現存する監督作品はたったの3つ。
そのうち‘人情紙風船’はここに登場済み。
これを観たらあとひとつになってしまうじゃないか!

丹下左膳餘話 百萬両の壺>

財政難の柳生家、でも、起死回生のある事実が。先祖伝来の「こけ猿のつぼ」に、
埋蔵金百萬両の隠し場所の絵図が塗りこまれているというのだ。
それを知らない領主は道場に婿養子に入った弟の源三郎にその壺を婚礼祝いに贈った。
事実がばれないうちに、領主の命を受けた家来は婿入り先に赴く。
「兄上はケチンボだ。婚礼祝いにこんなきたない壺をくれただけ」
意地を張る弟。何度もやって来る家来を道場の門下衆を使い、無理やり白状させる。
だが、時はすでに遅し。汚い壺を嫌って、源三郎の妻はごみ屋に売っていた。
そのごみ屋は隣の家の男の子ちょい安に金魚用の壺にとあげてしまう。
その子の父親はやもめで、露天商なのに大店の主のようなふりをして、的場通い。
目当ての女の前でいい恰好をしようとして、やくざ者の怒りを買って殺されてしまう。
的場のおかみと用心棒の丹下左膳は、殺された男の家を探して長屋に。
孤児になったちょい安を的場に連れ帰り、なりゆきで引き取ることに。壺も一緒だ。
壺を探して江戸中のごみ屋を当たる源三郎。でも、的場の女に入れ込み店の常連に。
「江戸は広い。壺を見つけるには10年か20年。まるでかたき討ちだ」妻にぼやく。
本家では名案を思いついた。壺を買い取るという紙を江戸中に貼る。
町民がどっと押し寄せるなか、的場に大損をさせたと勘違いしたちょい安も列に並ぶ。

隻眼・隻腕の怪異な風貌の丹下左膳がこんなにキュートだったとは!
恋人の的場のおかみとのやりとりが掛け合い漫才のように面白い。
子供は嫌いだから引き取らないと言っていたのに、おかみはちょい安を猫かわいがり。
いじめっ子がいると寺小屋通いを厭がるちょい安を無理に送り出し、結局助ける左膳。
ボケとツッコミのリズミカルに展開するコメディ。そして、子供への豊かな愛情。
大河内伝次郎の立ち回りはスピーディーで躍動感に溢れる。これぞ剣劇スター!
‘人情紙風船’同様、時々ハッと息を呑むような美しいショットが見られる。
ああ、あと1本しかないのかあ。稀有な作品、稀有な監督。大事に観ないとな。
今回のトラウマは、あの有名な「シェイは丹下、名はシャゼン!」ってセリフがない!
シリーズ前作の伊藤大輔監督作品でないとだめか〜。こっちも観ないとな。