guracolo docolo

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トラウマティック銀幕 M

先週の‘エル’の次なら、当然これでしょ?って、アルファベットだけ?
実は内容もリンクしているような。妄想狂に変質者。トラ銀らしいでしょ。

<M>

子供たちが輪になり遊んでいる。‘斧で首をチョッキン、黒い服の汚い人が来る〜♪’
「そんな歌はやめなさい!」母親の一人が叱りつける。「縁起でもない!」
街は戦々恐々としている。これまでに8人、少女ばかりが殺されている。
賞金一万マルクをかけても、目撃者なし、手掛かりなし、証拠なし。
そして、9人目の少女が殺される。犯人は犯行声明を新聞社に送りつける。
無能と非難された警察は夜の街を一斉捜査。怪しい人間は全て逮捕。
そのトバッチリを受けたのは、犯罪組織だ。どこも警察だらけで、商売ができない。
それぞれの犯罪グループの代表が会議する。「我々の手で犯人を捕まえよう」
警察でも捜査会議。「精神病院や施設や刑務所から5年以内に出所したものを洗え」
犯罪グループは組織力。乞食を街中に配置して、子供たちを見張らせる。
警察は地道なローラー作戦。そこで浮かんだ容疑者の部屋を張り込む。
容疑者を見つけたのは盲目の風船売り。仲間の少年に告げる。
「殺された女の子は口笛を吹く男に風船を買ってもらった。今、その口笛が聞こえる」
少年が口笛の男のあとをつけると、女の子に菓子を買ってやっている。
少年は自分の手にチョークでMと書き、わざとぶつかり男の背中にその文字をつける。
そうしておいて犯罪組織に通報。指令が飛ぶ。背中にMと書かれた男を追え!

あれ?無声映画じゃなかったの?31年製作だからな。
で、もっと怖くて不気味なものを期待したんだけど、意外とコミカル。
犯罪組織が警察のお株を奪い、連続殺人犯を追い詰める。国家権力を出し抜く痛快さ。
連続犯のピーター・ローレはまさに怪演。死刑を求める犯罪組織の人間たちに、
「おまえたちは人殺しを選択できる。自分は選べない。無理やりやらされるんだ」
ひとを殺すことでのみ、殺せという執拗な命令が止む。異常者の悲痛な叫びは哀れだ。
電線に引っ掛かる風船で女の子が殺されたことがわかるなど見事なショットの数々。
この作品はノワール映画の先駆け的存在らしい。渡米後のラング映画も観なきゃ。
今回のトラウマは太っちょのローマン警部。こわもてでコミカル。伊東四郎みたい。