トラウマティック銀幕 黒い罠
原題は“Touch Of Evil”。ノワールのカルト作品にピッタリ。カッコイイ!
公開当時は失敗作と言われた。ウェルズの不在中に映画会社が勝手にカットしたから。
今日観たのはけっこう短めだったから、それなのかも。ああ、不安〜。
<黒い罠>
アメリカとメキシコの国境の町、ロス・ロブレス。
メキシコの麻薬捜査官バルガスは新婚旅行中だ。新妻はアメリカ人のスーザン。
ふたりのすぐそばで、建設業者リネカーと愛人を乗せた車が爆破される。
とりあえず妻をホテルに帰して、現場に駆けつけるバルガス。
捜査にあたるのはでっぷりと太り、足を引きずる米国捜査官ハンク・クィンラン。
爆発したのはアメリカ側だが、ダイナマイトを仕掛けられたのはメキシコ側。
捜査に参加するバルガスにあからさまに敵対するクィンラン。
ひとりでホテルに向かうスージーに、メキシコの若者が伝言を渡す。
バルガスに渡すものがあるから、若者について来るようにと書いてある。
スージーを呼び出したのはジョー・グランデ。グランデ一家のボスだ。
「麻薬で捕まった兄弟を刑務所から出すよう夫に伝えろ」新婚妻を脅す。
それだけでは済まず、一家の若い者にホテルを見張らせたり、尾行させたり。
夫は捜査にかかりきりになるので、スージーはアメリカ側のモーテルへと移る。
クィンランたちとバルガスは建設現場へ。数日前にダイナマイトが盗まれている。
そこへ被疑者を確保したとの一報。リネカーの娘のボーイフレンドのメキシコ人だ。
彼は靴のセールスマンのサンチェス。リネカーの建設会社をクビになっていた。
捜査官たちはサンチェスの家に行き、クィンランと部下のメンジスは家を捜索する。
サンチェスは無実を訴え、同国人のバルガスに助けを求める。
でも、バスルームからダイナマイトが見つかる。箱の中から見つかったと言う。
バルガスは異を唱える。先にバスルームに入り、箱が空だったのを知っているからだ。
「証拠捏造だ」バルガスは地方検事やクィンランの直接の上司である署長に訴えるが、
クィンランへの信頼は厚い。多くの難事件をメンジスとともに解決してきたからだ。
バルガスは懇意になった検事補佐アル・シュワルツの協力を得て、
クィンランが扱ってきた事件の記録を閲覧し、どれも今回と同じケースだとわかる。
自分の立場が苦しくなってきたクィンランに、ジョー・グランデが協力を持ちかける。
「バルガスと女房は麻薬をやっているらしい」クィンランは上司の耳に入れる。
グランデ一家の若者たちはスージーの泊まるミラドル・モーテルへと迫る。
男が時限爆弾のダイヤルを回して車にセット、男と女がその車に乗り込み、
ゆっくりと夜の町にすべり出し、ぶらぶら歩いているバルガス夫妻の横を通ると…。
有名な冒頭のワンカット長回し。モダンジャズの音楽もピッタリでカッコイイ!
オーソン・ウェルズの腐敗刑事は事件を証拠捏造で一発解決し、名声をほしいままに。
妻を絞殺されて以来、長年酒を絶ち、甘いものを食べすぎて太りすぎて別人に。
捜査で久々に訪れた、かつての馴染みの酒場のマダムも驚く変わりようという設定。
ただのワルで終わらない奥行きのある人物像をウェルズならではの怪演。
当時は晩年ほど太っておらず、メイクや詰め物で作りすぎ!って感じがしたけど、
そもそもチャールトン・ヘストンのメキシコ人もなんか違和感があるし、
極めつけがマレーネ・ディードリッヒのメキシコ・マダム。雰囲気ありすぎ!
名優たちの豪華顔合わせによるかくし芸大会で、ノワールを撮ったって感じがする。
今回のトラウマはスージー役のジャネット・リーが泊まるモーテルの従業員。
“サイコ”のノーマンほどじゃないけど、今回もかなり変でアブナイ人。
“激突”や“警部マクロード”のデニス・ウェーバー。オイシイ役だな。