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トラウマティック銀幕 雄呂血

‘おろち’と言えば、まず想像するのははやまたのおろち
それよりも、やっぱり楳図かずおのあの‘おろち’かな?
ホラー剣戟?なんとなくビデオのカバーの坂妻の顔がおどろおどろしいぞ。

<雄呂血>

時は享保の頃。ある城下町。漢学者の永山の古希を祝い、塾生たちが酒宴の席に。
塾生の一人の久利富平三郎にからむ波岡。家老の息子で高飛車に「杯を取らす」
ふたりは喧嘩に。明らかに波岡が悪いのに、身分が低いせいで平三郎が悪者にされる。
師の永山から次に喧嘩をすれば破門にすると叱責され、三十日間の閉門を命じられる。
自分は悪くないのに。むしゃくしゃする平三郎の前を歩く三人組。
永山の娘の奈美江の噂話をしている。平三郎は密かに想いを寄せているのだ。
「奈美江は生娘じゃない。城に上がった時に殿を誘惑した。出世を願う父親の差し金だ」
これを聴いた平三郎は三人にいきなり斬りかかる。師匠と奈美江の名誉を守るために。
だが、ただの乱暴者として奈美江には嫌われ、師匠から破門。主君からも暇を出される。
平三郎は故郷を捨てて流浪の旅へ。一年後、落ちぶれた浪人となって再び戻る。
料亭の下に通りかかると、二階にいた酔っ払いの侍から料理をぶっかけられる。
怒りにかられてその武士を出せと料亭の番頭相手に暴れると、役人に捕まってしまう。
二か月の入牢。当てのない平三郎は牢仲間のねずみの幸吉の家にやっかいになる。
幸吉の用心棒として一緒に居酒屋「吉乃川」へ行くと、奈美江そっくりのお千代がいる。
魅かれる平三郎に幸吉は「あっしにまかせなさい」。お千代を誘拐して、平三郎に渡す。
おびえるお千代を前に平三郎は迷う。お千代を逃がすと決心した時、捕り方に囲まれる。
幸吉一味もろとも捕縛され、再び牢へ。半年後に牢破り。お千代が恋しかったからだ。
だが、お千代はすでに人妻に。捕り方から平三郎を救ったのは土地の名士の次郎三親分。
その正体は大悪人。女を誘拐したり土地をせしめたり。騙されている世間を笑う平三郎。
その笑いが凍りつく。生き倒れの侍夫婦を救った次郎三。狙いは妻の操。奈美江だった。

自分は悪くない!誤解だ!いくら弁解しても聞き入れられない平三郎。
あまりにもまっすぐ、あまりにも無垢、あまりにも強引。
奈美江にもお千代にも自分の思いを伝えるのに、いきなり腕を掴んで迫る。
そりゃ逃げるよ。怖いよ。目は血走っているし、何をされるかわからないし。
自分をわかってくれない世間が、善人面をしているやつに騙されているのは痛快。
でも、悪人になれない。世間に復讐しない。ひとを殺してしまってショックを受け、
武器を投げ捨ててしまう。それでも世間からは無頼漢と見なされたまま。
悪人に見えて実は悪人でない、善人に見えて実は善人でない。世間は盲目。
不条理で理不尽な世の中で不器用にあがく主人公の悲劇をニヒルに描く。
今回のトラウマは、雄呂血って何?「鬼じゃない」と叫ぶ平三郎は孤独な怪物おろち?