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トラウマティック銀幕 他人の顔

新年度が始まる。学校だったら新しい学年、新しいクラス。ワクワクドキドキ。
あれはグラコロの中学三年生の新学期。クラス替えでメンツが一新。
その中にすごいやつがいた。読んでる本がソルジェニーツィンの‘収容所群島’。
それも速読で。すごい!友だちになって、さっそく薦められた本がこれだった…。

<他人の顔>

液体酸素を浴びて顔を失った男。それ以来、妻とも友人とも関係がギクシャクする。
ある夜、男は妻にちょっとした実験をやろうと提案し、部屋の明かりを消す。
男は言う、「自由になれるのは暗闇の世界でだけだ」男は妻を求め、拒絶される。
常務である友人にしばらく会社を休むと告げ、男はある精神科医の元へ。
拒絶した妻へ仕返しするために、男は医者に自分の仮面を作るよう依頼。
医者は躊躇する。「実験的興味はあるが、何か危険なものを感じる」
医者は一応、脅迫されたとして仮面作成を受諾、男はマンションを借りることに。
管理人の娘のノブ子は精神薄弱で、ヨーヨーに夢中だ。いくら禁じられても探し出す。
初対面の男にヨーヨーを持っていることを内緒にしてと言うが、父にばれてしまう。
仮面が出来上がる。仮面をかぶることで心理的な透明人間となると言う医者に男は、
あらゆる感情を取り戻すための仮面であって、自分はあくまでも自分だと主張する。
だが、今まで地味で陰気な男だったのに、他人の顔を得た男はよく笑い、服装も派手に。
ただ、ノブ子だけが包帯を巻いた男と仮面の男が同一だとわかってしまう。
医者はそれは精神薄弱だから、匂いで嗅ぎ分けているんだと男の不安を一蹴する。
それよりも自説通りに男が変化して喜ぶが、男の真の目的が妻を誘惑することだと知る。
男と妻と仮面の男の三角関係となり、そのうちのだれかが死ぬのではと危惧する。

あらあら不思議、仲代達矢の顔が本物の仮面に見えてくる。さすが名優!
大昔に読んだ「他人の顔」はよくわからないまま、グロテスクな男の妄執だけがトラウマに。
今回はけっこう面白く観れた。まずはこの男の復讐心がいかに矮小で卑しいかってこと。
傷なんか大したことないと慰める妻に、自分と同じくらいの傷を負わせようと考えたり、
妻の言葉尻をとらえてはネチネチと嫌味を言ったり、妻を誘惑して正体をバラして責める。
夫とわかって誘惑された妻なのに、男には想定外…あまりにも情けなさすぎる。
新しい顔を得た男のジタバタぶりに平行して、ケロイドの美少女の悲劇も描かれる。
長崎で被爆。精神病院の下働きで、患者に襲われそうになる。兄と結ばれ入水自殺。
彼女だったら仮面をもっと正しく有効に使えたかもしれない。男とは真逆の存在。
豪華出演者で、医者が平幹二朗、看護婦が岸田今日子、ヨーヨー女が市川悦子に、
こんなところにあんな人がって驚かされた。ちょっと伊丹十三の「たんぽぽ」みたい。
監督が勅使河原宏、脚本が安部公房、音楽が武満徹と、こっちも豪華。
で、一番ゴージャスなのが男の妻役の京マチ子。大女優なのにこの映画!
で、今回のトラウマもマチ子さまの豊満な乳房!大女優なのに惜しげもなく。
いきなりだったので、え?うそ?まさか?ありがたや〜!思わず拝みましたとさ。