トラウマティック銀幕 突然炎のごとく
原題は‘ジュールとジム’というらしい。
前々回観た‘パルプ・フィクション’でヴィンセントが相棒ジュールスに、
‘Don't Jim Me,Jules.’(ふざけるなよ)と言うセリフ。やるなあ〜。
<突然炎のごとく>
パリでオーストリア人のジュールとフランス人のジムは意気投合する。
お互い詩人や作家志望でウマが合い、遊びもスポーツもいつも一緒。
違うのはジュールは女性にフラれ続け、ジムにはジルベルトという恋人がいる。
ジュールの芸術家仲間のアルベール宅で古代の女神像の写真に魅せられる。
その女神像にそっくりなカトリーヌとふたりは出会い、ふたりとも一目ぼれ。
「手を出すなよ」積極的にアタックしたのはジュール。ジムは引きさがる。
海へ行く約束のした日、カトリーヌを迎えに行くと彼女は部屋で手紙を燃やす。
「ウソを燃やすの」鞄に硫酸瓶を入れようとする。「ウソつき男にかけるの」
海岸近くの大きな一軒家を借りて三人で宿泊。ジュールは彼女にプロポーズ。
「ウブなあなたと経験豊富な私とならいい夫婦になりそうね」いい感触。
せっかく海に来たのに、雨が続くとパリが恋しくなって戻ると言うカトリーヌ。
ジュールとカトリーヌは一緒に暮らし始め、ジムは作家になる。
ある夜、歩きながら観終わった芝居についてふたりの男が激論をかわしていると、
カトリーヌはいきなりセーヌ川に飛び込む。なんとか助け出した男ふたり。
衝撃が冷めやらぬ彼らを不敵に笑い、「ジム、明日カフェで話をしましょ」
だが、待ちぼうけ。あきらめて帰ったジムと入れ替わりにカトリーヌは来た。
ジュールとカトリーヌは正式に結婚しドイツに。直後に第一次世界大戦に。
仏独開戦で徴兵されたふたりは互いを戦地で殺さぬよう神に祈るばかり。
終戦。カトリーヌと娘サビーヌはドイツを訪れたジムを駅に出迎える。
山荘でお互いの無事を喜び合うジュールとジム。「よくも戦争に勝ったな」
「君は幸せを勝ち取ったじゃないか」でも、ジュールの顔色はすぐれない。
カトリーヌとサビーヌが眠ったあとジュールは言う。「彼女は僕を捨てる」
ボタンの掛け違いだったのか?もし、ジムがカフェで待ち続けていたら?
カトリーヌはジュールじゃなくジムと結婚していたのか?でも、どっちにしろ…。
カトリーヌは常に自分が注目されていないと、烈火のごとく怒りを爆発させる。
男ふたりがゲームをやったり議論を戦わせたりすると、突然暴力的になる。
いつも女王さまでないとだめ。男はそんな女にかしずくのね。夢中になるのね。
突然の炎って、彼女の瞬間湯沸かし器的性格のこと?ああ、やれやれ〜。
すべては己が命じるまま、誰にも抑えられないビョーキのようなカトリーヌを、
フレンチ女優界の女王さまジャンヌ・モローが憑依的に演じる。見事すぎる。
彼女に生気を奪い取られるジュールをオスカー・ウェルナーは繊細に、
逃げようとしてもクモの巣で絡め取られるジムをアンリ・セールが淡々と演技。
実はトリュフォー監督の映画はこれ一本しか観ていない。なんか気が進まない。
ヌーヴェルヴァーグの至宝、ラウル・クタールの撮影のものが多いから観ないとな。
今回のトラウマは不幸顔のジャンヌ・モローだけど、男装するとめちゃカワユイ。
ヒゲなんか描いてもよく似合う。走ると女の子っぽくてやっぱりカワユイ。