トラウマティック銀幕 いとこ同志
‘勝手にしやがれ’を世界一早く買いつけた秦早穂子さんの‘影の部分’を読んだ。
五十年代フランスで日本人女性がひとりでいい仕事!めちゃめちゃカッコイイ!
で、気がついた。ヌーヴェルヴァーグってゴダールくらいしか観てなかった…。
<いとこ同志>
シャルルは田舎からいとこのポールを頼ってパリに出てくる。
大学の法学部に通うためで、母がいとこと同居するならと許したのだ。
ポールのアパルトマンに着いたシャルルはモダンで洗練されたインテリアに驚く。
そして、そこに謎めいた男が。クローヴィスというその男は年は30過ぎの無職。
ポールと彼との関係をいぶかしんでいると、ポールへ女性から電話が入る。
不穏な雰囲気にシャルルは寝室に。クローヴィスは訪ねて来た女性の堕胎を世話する。
翌日、ポールはスポーツカーでシャルルをパリ案内。カルチェラタンのなじみのバーへ。
そこはポールの学友たちがだべり、賭けブリッジをする者や女にふられてやけ酒の者。
シャルルは店に来たフロランスに一目ぼれ。ポールに紹介を頼むが乗り気でない。
初対面の挨拶のあと用事があると外に出た彼女を追うと、遠くで男と一緒にいる。
大学生活が始まるが、ポールやその友人たちは勉強などそっちのけ。
ある日、ポールは自宅でパーティーを開き、友人たちが大勢やって来る。
フランソワーズとフランソワーズの新恋人ラモー、元恋人のフィリップ。
クローヴィスはイタリア人のアルカンジェロ伯爵を同伴。彼に女性を紹介して金をもらう。
そこにフロランスもやって来る。シャルルは猛アタック。「君が来るのを待っていたんだ」
突然、ポールは明かりを消し、ワグナーをBGMにろうそくを灯してドイツ詩を暗唱。
だが、失恋男が騒ぎだしたため中断。どさくさにまぎれてシャルルはフロランスと脱出。
「このまえ一緒にいたラモーはきみの恋人?」「友達よ」「あやしい友達だな」
ドライブに行こうとシャルルはポールに鍵を借りに戻ると、みんなでドライブとなる。
せっかくのチャンスを潰され、電話番号を訊き逃したが、翌日フロランスから電話。
デートの約束。シャルルは5時と聞いたのに、フロランスは3時にアパルトマンに来る。
応対に出たポールはフロランスをつかまえる。「いったいどういうつもりなんだ?」
郷に従えなかった田舎ネズミの悲劇とそのトバッチリを受ける都会ネズミ。
要領の悪い人間は要領のいい人間に腹が立つのはわかる。guracoloも不器用だから。
でも、ポールは田舎から来たいとこを下宿させてやり、あちこち案内してやり、
いろいろ友達を紹介してやり、寝食忘れたガリ勉の心配をし、遊び女から救ったのに…。
酸いも甘いもわかり、裏の事情にも通じているポールにまさかの展開となる。
やるせない、不条理な悲劇的結末がヌーヴェルヴァーグの特徴なのかな?
保守的な家庭育ちで不器用でちょっとマザコンっぽいシャルルをジェラール・ブラン、
都会的ブルジョワで要領のいい享楽的なポールをジャン=クロード・ブリアリが好演。
こりゃヌーヴェル!なのはカメラマンのパン使い。グルリンッとグルグルグルッが巧み。
今回のトラウマは家事が苦手なフロランスが作った料理‘プロヴァンス風トマト’
とっても不味かったらしい。料理名にはそそられるからだれかレシピ教えて。