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トラウマティック銀幕 クライング・ゲーム

イギリスにいた頃はIRAの活動が最盛期。地下鉄で避難させられるのは日常茶飯事。
すぐ近所で爆弾が爆発したし、破壊されたシティへ物見遊山のボムツアーに行ったし。
でも、爆発する前に必ず警告電話が入ったから、犠牲者はまったく出なかった。
すごく奇妙だったのはシンフェイン党のアダムズ党首の動画も肉声もTVで流さない。
静止画像に吹き替え。それもものすごいアイリッシュ訛りで。

クライング・ゲーム

うらぶれた田舎の遊園地で遊ぶ黒人の男と白人の女。ふたりを追う白人の男。
ひと目の少ない裏手でことに及ぼうとすると、突然三人の男が黒人の男に襲いかかる。
アイルランドに駐留中の英国軍兵士をアイルランド共和軍の男たちが拉致したのだ。
英国政府に捕まった仲間が3日以内に釈放されなければ、人質は殺される。
人質を手荒に扱うIRAたちのなかで、ひとりだけ親切にする男がファーガソンだ。
黒人兵士ジョディの食事や小便の世話をやく。やがて、ふたりの間で友情が生まれる。
「見せたいものがある」ジョディはサイフのなかの写真をファーガソンに見せる。
「ディルだ。彼女こそ俺のタイプ。それなのにあんな女に引っかかってしまって…」
アイルランドでの任務に嫌気がさし、つい女遊びをしようとしてこんなことに。
「もし俺が殺されたら、愛していたと伝えてくれ」すでに覚悟を決めていて、
恋人はミリー美容室で働き、パブのメトロでマルガリータを頼んでやってくれと言う。
交渉は決裂。人質殺害は翌朝と決まる。処刑はファーガソンがやることに。
人質と親密だったのに自分から処刑人に名乗りをあげ、仲間から見直される。
そして、朝。ふたりで処刑場へ向かっていると、ジョディは突然走り出す。
「あんたは俺の背中を撃つことなんてできないだろ」撃つのを躊躇するファーガソン
だが、ジョディが道路に出ると、いきなり装甲車に轢かれて死んでしまう。
IRAのアジトを英国軍が急襲。ファーガソンはなんとか無事に逃げ、渡英する。
昼はロンドンの建設現場で働き、仕事を終えると閉店間際の美容室へ。
ディルに髪をカットしてもらい、彼女のあとを追ってメトロへ。偶然を装って再会。
ヒモのデイブを追いちらしていいムードになりかかるが、実はディルは…。

久しぶりに観直すけど、やっぱりディル役のジェイ・デヴィッドソンが素晴らしい!
当時はファーガソンとまったく同じようにもうビックリこいてしまいました。
タイトルからわかるはずだったのに。ボーイ・ジョージクライング・ゲームだぜ。
血塗られたイギリスとアイルランドの歴史、陰惨なIRAと英国軍の戦い、
シビアな状況なのにそれでもユーモアを忘れずに飄々と生きようとするたくましさと、
マイノリティの人々への慈愛も盛り込まれて、この映画はかなり奥深くて味わい深い。
妖しく激しく純情なディル、愛くるしいフォレスト・ウィテッカーのジョディ、
ビッチぶりがもはや名人芸のミランダ・リチャードソンのジュードに受けて立つのが、
どこまでも自然体のスティーヴン・レイファーガソンが最高。これで大ファンに。
ニール・ジョーダン作品は‘モナリザ’も必見。ボブ・ホスキンスが泣かせるよ。
今回のトラウマは冷血でしぶといジュード。死んでないかも。ガバッと起きあがるかも。