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トラウマティック銀幕 夢みるように眠りたい

最近、林海象の‘彌勒’が公開されたけど、千葉にも来てほしかったなあ〜。
仕方ないから未観のデビュー作品でも観ておこうっと。DVDになっていたのね。

<夢みるように眠りたい>

魚塚探偵事務所にある依頼の電話が入る。娘が誘拐されたらしい。
依頼人は月島桜と名乗る老婦人で、使いのものを事務所に行かせると言う。
翌日、老執事がやって来た。誘拐されたのは月島桔梗。電話の録音を聞かせる。
「桔梗さまは当方であずかる。身代金は百万円」あまりの高額に魚塚と小林少年は驚く。
老執事は成功報酬込みで二百万円を用意していた。録音は続く。「まず謎解き遊びを」
将軍塔が見える花の中、星が舞うという謎の言葉。鬼塚は前金の三万円だけ受けとる。
まず将軍塔だが、探しても見つからない。何を手がかりにすればいいか苦悩する魚塚。
街を探索する小林少年は卵マジックをする手品師から景品として仁丹をもらう。
それを見て魚塚はピンとくる。仁丹のマークは将軍だ。ふたりは浅草の仁丹塔に向かう。
塔から花屋敷が見える。人工衛星という乗り物にたどり着くとまたテープレコーダーだ。
「身代金を二百万円に値上げする。受け渡し場所は地球ゴマが教える」
魚塚はコマ職人からコマの行商人のことを聞き、縁日の月島神社へ向かう。
Мパテー商会という行商が地球ゴマを売る。手品師が使う幕もМパテー商会とあった。
行商の三人組は二手に分かれる。魚塚と小林少年も二手に分かれてあとを追うが…。

月島桜は日本初の映画女優として主演映画‘永遠の謎’撮影中に警察に踏み込まれ、
検閲のせいで映画は未完のままお蔵入り。相手役の正義の味方は魚塚そっくりだった。
そのせいで誘拐事件に巻き込まれ、しだいに現実と未完の映画世界が交錯しだす。
戦後間もない頃なら、黄昏どきの路地裏などまだ不思議の世界に通じていたんだろな。
林海象はそこへの自由な出入りを許される、現代では稀有になった監督のひとりだ。
まるで高倉通りと堺町通りの間に潜むパラレル小路やひずみ図子に入り込んだよう、
狸に化かされて堂々巡りの迷路に迷い込んだ奇妙で不安で怖い感覚があるのがいい。
それを単なる映像処理だけで行うのではなく、木村威夫の美術で深みを与えている。
老執事松乃助役の吉田義夫は‘悪魔くん’でメフィストをやっていた。懐かしい!
今回のトラウマはゆで卵だけの食事。探偵事務所は貧しいけど、魚塚の超好物。
撮影中に何個食べたんだろ?無理やりつきあわされる小林少年にはブラック上司だ。