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トラウマティック銀幕 袋小路

前回のポーランド映画にまだどっぷりトラウマっている。
この際だから、どっぷりついでに今回もポーランド人監督ものにしよう。

<袋小路>

海辺で故障した車を押す男。腕には包帯を巻いている。かなり重傷のようだ。
運転席の男も朦朧としている。車内にはマシンガン。車は標識に衝突して止まる。
包帯の男は電話を借りにその先の古城に向かう。砂浜では若い男女が睦みあう。
包帯男は城で電話を探すが見つけられない。そこへさっきの若い女が現れる。
男は物陰に隠れる。城の主らしき中年男も凧を持って友人夫婦と戻ってくる。
若い女は主の妻テレサ、若い男は友人夫婦の息子。夫婦と息子はボートで帰る。
夜、テレサが城の主である夫ジョージにネグリジェで女装させると、階下で物音。
ふたりは降りていくと、包帯男が電話をかけている。「誰だ?」「ディッキーだ」
包帯男ディッキーはふたりに、満潮で水に漬かる車から仲間を救う手伝いをさせる。
電話がようやく繋がった仲間に救助を求め住所を伝えると、電話線を切ってしまう。
そして、城主夫婦は寝室に閉じこめて、腹を撃たれている仲間のアルビーを手当て。
夜中、外の物音に気づき、テレサは眠っているジョージを置いて寝室を脱出。
浜辺でディッキーは砂を掘りかえしている。死んだアルビーの墓を掘っているのだ。
見とがめられたテレサは手作りウォッカを差しだす。「これが欲しかっただけよ」
ふたりは酔っ払ってジョージを起こしに行き、墓穴を掘らせてアルビーを埋葬する。
朝、テレサは海へ泳ぎに行き、ディッキーとジョージは浜辺を散歩。そこへ飛行機。
助けが来たと喜ぶディッキーだが、定期便だとわかってピストルを空に向けて撃つ。
「落胆するなよ。わたしだってこの城が大嫌いなんだ。全財産をつぎ込んだのに」
ジョージは続ける。「結婚して10カ月。妻にぞっこんだ」「女は尻軽ばかりだ」
翌朝、助けが来るとディッキーは新しいシャツにネクタイをつける。だが…。

小柄で気弱なジョージがポーランド、大柄で図々しいディッキーがソ連みたい。
前回‘カティンの森’を観ていなかったら、多分ちがう観方になっていたんだろなあ。
誰からも邪魔されることなく、悠々自適の引退生活。絵を描き手作り凧をあげ、
訪問客に自慢するのは、文豪が‘ロブ・ロイ’を書きあげた城の一室や若い美人妻。
でも、実際に住んでみたら寒いし、陰気臭いし、住みにくいったらありゃしない。
気まじめで理屈っぽくて下戸だから、享楽的な妻には嫌な顔をされてばかり。
危機や災難に遭遇して隠れていた本性が露呈してしまい、離婚となる場合がままある。
頼れるはずの夫が実は木偶の坊、最愛の若妻は夫への愛情が皆無だとすると…。
ロマン・ポランスキーはこの映画の前年にカトリーヌ・ドヌーブで‘反撥’を撮る。
どちらも姉妹は演技開眼できたのに、フランソワ・ドルレアックは急死。惜しい!
今回のトラウマはジョージに髭を剃らせるディック。人質に刃物を持たせる豪胆さ。
でも、お肌がデリケートだからシェーバーはだめって。強面【こわもて】なのに。