新・トラウマティック銀幕：婚約者の友人

〈婚約者の友人〉
第一次世界大戦直後のドイツ。婚約者のフランツが戦死したアンナ。
ある日、墓参りをすると白いバラがフランツの墓に供えられている。
彼女がフランツの両親と一緒に暮らす家に見知らぬ男がお悔やみに訪れる。
フランス人青年アドリアンだ。フランツのフランス留学時代の友人か？
フランツの両親もアンナも彼の真摯な態度に次第に心を開いていく。
でも、彼のほうは温かく受け入れられることで、日に日に憔悴する。
そして、アンナに真実を告白して、とつぜん帰国してしまう。
アンナはフランツの両親にアドリアンの母親が急病だと嘘をついてしまう。
そして、彼のパリの住所に手紙を出すが宛先不明で返ってくる。
アドリアンを心配するフランツの両親はアンナにフランスに行くよう勧める。

汽車でドイツから向こう側に行くと、フランスも同じように戦争の傷だらけ。
片側にいると自分だけが被害者だと思っていたのが、もう片側も被害者だった。
アンナとフランツの両親は婚約者・息子の死ととともに時間が止まっていた。
そこへアドリアンがやって来て、家族は笑顔と生きる喜びを取り戻す。
そりゃ麗しいピエール・ニネのアドリアンのウルウルの瞳で見つめられると、
敵国のフランス野郎でもなんでも許しちゃう。アンナみたいに惚れてしまう。
繊細なフランスに純朴なドイツはやっぱり負けちゃうんだよなあ。

トラ銀ポイント：並木道
白黒のしっとり美しい画面はまるで古典映画を観ているようだった。
ルネ・クレール？　いや、キャロル・リードだなって。
すると、あの‘第三の男’で有名な並木道のようなシーンが！
二度もあるから、これはもうオゾン監督が絶対に確信的にやっているはず。