トラウマティック銀幕 大菩薩峠
これは実はラストだけ知っていた。で、なんであんなことにってのがトラウマでした。
盲目の浪人が茅葺き屋根に乗っかったまま、洪水の川を流されて行く〜。
<大菩薩峠>
大菩薩峠を行く二人の巡礼。年老いた老人と孫娘のおまつ。
おまつが水を汲みに行っている間に、老人は行きあった男に斬殺される。
男は机竜之介。父の机弾正は病に臥し、代わりに道場を任されている。
宇津木文之丞の妹という女が訪ねて来て、明日の奉納試合を負けてくれるよう頼む。
拒まれて家路に戻る女を、竜之介は水車小屋番の与八に誘拐させ、手篭めにする。
実は女は文之丞の内縁の妻の浜で、これがもとで離縁されてしまう。
試合で竜之介は文之丞を打ち殺す。試合後、門下が仕返しに来ると浜が知らせに来る。
竜之介は全員を斬り殺して、浜を連れて江戸へと逃げる。
江戸で浪士の用心棒となった竜之介は毎日がつまらなくてたまらない。
息子が生まれ、息子のためにまともな仕事に就くよう毎日にように浜がなじる。
ある日、剣豪名高い島田虎之助の道場に通りかかると、けいこの迫力に血が沸き立つ。
吉田竜太郎と偽名を名乗り、竜之介が手合わせを許された相手は宇津木兵馬。
兄のかたき討ちのため島田道場で腕を磨こうと、江戸に出てきていたのだ。
竜之介の顔は知られていない。簡単に兵馬に勝ち、義弟が江戸にいると浜に教える。
浪士たちは尊王攘夷のために京へのぼることになり、竜之介にも同道を求める。
「留守を頼む」「坊やとわたしは?」「連れて行けない」「坊やさえいなければ」…。
背を向けて眠る竜之介にお浜は、兵馬に討たれてくれと言いながら刃で襲いかかる。
三部作の一作目はこのあと、浜を殺した竜之介は京にのぼり、霧の中で兵馬と対決。
二作目はいろいろあって天誅組の巻き添えで盲目になり、崖の上で兵馬と対決。
三作目はいろいろあったあと、嵐の中で兵馬と対決。で、あのラスト。
心に魔を抱く雷蔵さまはゾッとするほど美しい。まさに適役。
驚きなのは中村玉緒の演技力の凄さ。魔物の竜之介相手に凄まじい悪女ぶりのお浜。
男難で薄幸の女のお豊。気骨のある郷士の娘のお銀。三者三様見事な演じ分け。
当時まだ二十一歳。完全に喰っている。喰われたのはおまつ役の山本富士子。
今回のトラウマはこのおまつ。二作目途中で行方不明。三作目も姿なし。
なぜだ?山本富士子になにがあったんだ?