トラウマティック銀幕 グラン・ブルー
海に囲まれた千葉県在住なのに、この夏も海水浴には行かなかったなあ。
だって、日焼けは嫌だし、海水は目にしみるし、砂が水着のなかに入るし、
クラゲはいるし、ジョーズはいるし、オルカはいるし(映画で被害妄想ぎみ)。
<グラン・ブルー>
ギリシャの小島に住むフランス少年ジャックは父とおじの三人暮らしだ。
潜水具をつけて、魚を取りに海中へと潜る父親を心配する。
「大丈夫だよ。溺れたら人魚が助けてくれるから」
父が浮かんで来るのを黙りこくって待つジャックに、おじが声をかける。
「何か話をしよう」「ママはなぜ出て行ったの」「実家に帰っただけだよ」
ジャックの心配は的中し、潜水具に水が漏れて父は溺死する。
二十数年後のペルー、保険会社の社員ジョアンナがトラックの事故調査に立ち会う。
凍結した湖に沈むトラックへと潜るのは、成長したジャック・マイヨール。
驚異の潜水技能を持つジャックの不思議な魅力にジョアンナはひと目ぼれする。
一方、潜水の世界チャンピオンのイタリア人エンゾはジャックの幼なじみだ。
なんとかジャックの居所を探し出し、シチリア島での世界選手権に参加するよう誘う。
ギリシャの小島暮らしの幼い頃、お互いの潜水技能を認め合っていた仲だ。
エンゾはジャックを破ってこそ、真の世界チャンピオンだと考えていた。
ジャックは純粋に勝負を楽しんでいた。そして、そこへジョアンナも合流する。
男と男の真剣勝負の世界には、女はけっして入り込めない。
上司を騙してイタリアへ行き、妊娠してジャックをつかまえておこうとしても無駄。
ジョアンナの存在がなければ、この映画がもっと深いものになっていたかも。
イルカだけが家族で、孤独な求道者然としたジャックとは住む世界が違いすぎる。
エンゾの彼女とジョアンナのトイレでの陳腐な会話は、もう聞いちゃいられません。
ジャン・マルク・バールは現実世界に馴染めない、海に囚われた男を好演。
ジャン・レノはこれぞイタリアーノ!快楽も勝負ごとも好きだけど、最後は海が好き。
今回観たのはオリジナル版。音楽はエリック・セラ。80年代AORって音楽。
特にエンディング曲は歌詞がクサくて、極上映像美の余韻を無残にも崩してくれる。
トラウマはジョアンナの雄たけび。話を聴かないジャックにギャ〜!そりゃ逃げるで。