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トラウマティック銀幕 殺しの烙印

鈴木清順の映画はATG以降しか知らない。
これは日活をクビになる原因となった映画らしい。
主演が宍戸錠、脇が南原宏治のふつうの日活アクション映画だと思いきや〜。

<殺しの烙印>

殺し屋ナンバー3の花田は妻のマミを伴って帰国。新たな依頼を受ける。
依頼主は藪原で、ある人物の護衛を頼まれる。最初に春日が請け負ったが、
酒のせいで殺し屋のランク外になったため、春日は花田と組むことになった。
ヨットハーバーでターゲットを車に乗せると、すぐに敵に追われる。
殺し屋ナンバー2の佐倉の手のものだ。春日は恐怖に襲われ、敵のひとり相討ち死。
花田は襲撃ポイントに火をつけ、佐倉を焼き殺して無事に客を送り届ける。
ナンバー3からナンバー2にランクアップした花田の元に新たな依頼が。
依頼主は謎の女。土砂降りでも幌なしの車を運転し、フロントガラスに鳥の死骸を飾る。
ターゲットは外国人。持ち時間はたったの3秒。建物の外に出て女の横を歩くのを狙う。
だが、花田の銃口に蝶が止まったために、狙いが狂って暗殺を失敗。
花田は組織から狙われることとなり、まず襲ってきたのは妻のマミだ。
ベルトのせいで急所ははずれたが腹を撃たれて、謎の女である美沙子の元に。
美沙子の部屋は鳥や蝶の死骸だらけ。花田は魅かれているのに相手は不感症だ。
傷が癒えて、今は藪原と暮らすマミの元に。藪原の命令で命を狙ったと白状するが、
色仕掛けでよりを戻そうとしても花田の心は美沙子にあり、命乞いも虚しく殺される。
そこへ藪原が帰宅して何者かに射殺される。花田は美沙子の家に戻ると8ミリテープ。
炎で拷問を受ける美沙子が映る。「花田を愛している」と言って、事切れる。
男の声が命じる。おまえもプロの殺し屋ならば、埠頭で5人を殺せ。
その5人を殺した花田に正体不明だった殺し屋ナンバー1が姿を見せる。

これはクビになるなあ。アクションとエロチックだけなら良かったのに、不条理が加わる。
花田にガチ勝負を持ち込む南原宏治がとても変だ。部屋に押しかけてきて、
銃をテーブルに置いて、お互いの隙を狙い合う。トイレに行けずにおもらし。
寝るときは片腕をベッドにくくりつけて花田と同衾。外に出るときは花田と腕を組む。
とても怪しい。それもものすごく楽しんでいる。サディスティックとは違う奇妙さ。
宍戸錠はこの前観た‘気狂いピエロ’のジャン・ポール・ベルモンドと似ているような。
アクションスターだけど不条理もこなし、ゲバゲバ90分みたいなコメディもOK。
演技の懐の深さを感じる。まだまだ現役で重厚な存在感を大いに発揮しているぞ。
映像は光と影のコントラストを生かして、白黒映画の良さを思う存分発揮している。
セットや美術やカメラワークの美意識と技術など、ものすごいものが結集されている。
これが当時二本立ての一本だなんて、贅沢すぎる!日活社長には嫌われたけど。
今回のトラウマは花田の淫乱妻マミ。自分の浮気は良くっても、夫のは許さない。
美沙子にやきもちを妬いて、窓ガラスを爪でキリキリキリ〜。やめて〜!