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トラウマティック銀幕 奇跡

NHKで見るのはニュースぐらいで、コスパ悪すぎ〜と思っていたら、
民放やケーブルで絶対やらなさそうなカール・テホ・ドライヤーものを放映。
さすがNHK!でも、小出しにしかやってくれないからイケズ〜。

<奇跡>

ボーエン牧場の真夜中、また兄のヨハネスがいないのに気づいたアーナス。
父のモルテン、兄のミケルとともにあとを追う。ヨハネスは丘に立ち説法中。
「我はキリスト。信仰なき者、偽善者どもに災いあれ。裁きの日は近い」
ここのところ毎晩こうで、ただ家族は呆然と見つめることしかできない。
先に戻ったヨハネスは家族に「我は戻りしが身内の者にも受け入れられぬ」。
農場の宗教改革を目指すモルテンが強力な指導者となるよう猛勉強を課し、
その結果、狂気に陥ったヨハネス。父に嫌気を覚えて信仰を捨てたミケル。
でも、その妻のインゲはその優しさと明るさで暗い家族の唯一の光明となる。
末弟の弟がミケル夫妻に相談を持ちかける。仕立て屋の娘アンナとの結婚話。
仕立て屋のペーター・ペーターションはモルテンと宗派争いを繰り広げている。
絶対に許してくれそうにないが、インゲはなんとか説得を試みると言う。
義父の好物のクッキーを作って話を切りだすと、突然ヨハネスが邪魔に入る。
「部屋に死体がある」と、意味不明の事を言うだけ言って、また自室に戻る。
話に戻り、臨月のインゲは次は男の子を生むからと言っても、義父は応じない。
一方、アーナスはミケルの言に従って仕立て屋へ結婚の許しをもらいに行く。
だが、ペーターションは宗派の違いを理由に絶対に結婚を許そうとしない。
帰宅した傷心のアーナスを見て、憤然としてモルテンは仕立て屋に向かう。
神の怒りを畏れ、苦行を強いるペーターとこの世の幸せを求めるモルテン。
アーナスの結婚よりも、お互いの宗派の主張の優越性を争ってつかみ合いに。
「モルテン、神罰がくだるぞ」そこへ電話が入る。お産のインゲの容体が…。

宗教は幼な子の心で信じるというシンプルなものであるべきなんだよなあ。
いろんなものがとりついちゃって、正統とか異端とか、権威だとか堕落とか。
精神を病むヨハネスの言葉こそ正論なのが、理解できるのはインゲの娘だけ。
その幼な子だけが信じたために、幼な子の願いを叶えるためだけに奇跡が起こる。
小さな村を二分する宗派争い、傍観する牧師、宗教より科学の医者、父と子の相克…、
大なり小なり世界中で現在進行中の出来事が、実は真の信仰からは乖離していると、
狂気でも正気でもキリスト憑依のヨハナスを使って寓話的手法で描いている。
前回観た‘裁かるゝジャンヌ’から三十年後の作品だけど、確としてブレない。
今回のトラウマは死の床に横たわるインゲ。もし、蘇って口を開けたら、
牙が生えていて男の喉に食いつくって思った。次は‘ヴァンパイア’を観ようっと。