トラウマティック銀幕 甘い生活
強烈なワンシーンしか覚えていないって映画のひとつ。
アニタ・エクバーグがトレビの泉で水浴びするシーン。
パパラッチという言葉を初めて知ったけど、さてストーリーはどんなんだっけ?
<甘い生活>
パパラッチを従えたゴシップ記者のマルチェロはキャバレーに侵入取材。
そこで有閑マダムのマッダレーナに誘われ、ふたりでドライブに。
途中で娼婦を拾い、彼女のねぐらに案内させ寝室を借りてよろしくやる。
帰宅すると同棲相手のエンマが服毒自殺をはかり危篤状態。
命はとりとめるが病院へは仲間のパパラッチに追われ、警察からは事情を聞かれる。
ある日、スウェーデンのグラマー女優シルビアが撮影でローマを訪れる。
マルチェロは彼女に気に入られ、夜の歓迎パーティーに誘われる。
踊りの相手の男友達をめぐって恋人と喧嘩してパーティーを抜け出した彼女を、
下心一杯に夜のローマを案内するマルチェロだが、振り回されただけで徒労に終わる。
またある日、記者になる前の作家志望時代の旧友シュタイナーと再会する。
招かれて彼の家を訪ねると、友人たちは画家や詩人や音楽家ばかり。
思慮深い妻とかわいい子供たち。恋人のエンマはただ上品な部屋を誉めるのみ。
高邁なシュタイナーにくらべ自分は…。久しぶりに小説を書こうとしてもすぐに挫折。
またある日、久しぶりにローマに来た父親とキャバレーへ。
踊り子と意気投合した父は彼女の部屋に行くものの、突然気分が悪くなり、
ゆっくり話がしたかったマルチェロがひきとめても、さっさと故郷に帰ってしまう。
その後も聖母が見える子供たちの奇跡取材や、貴族たちのパーティーに便乗参加など、
家に帰らず、享楽的な毎日を送るマルチェロと束縛的なエンマの衝突は絶えない。
そして、マルチェロが唯一心のよりどころとしていたシュタイナーに悲劇が起こる。
最後の海辺のシーンでは、たぶんあっちに行けば救いがあったんだろなあ。
腐敗ギリギリの熟れすぎた禁断の果実を食べすぎた中毒者たちの甘い生活。
マルチェロが堕ちていくのに歯止めをかけるどころか拍車をかけるのがエンマ。
表層的なものしか見えない。話題は食べ物と夜の営みばかり。でも、愛はたっぷり。
小説とゴシップ記事、知性と本能、洗練と卑俗、愛情と憎悪、マルチェロは揺れる。
ズルズル・ダメダメのマルチェロをマストロヤンニが色気たっぷりに演じる。
それに、フェリーニの審美眼は確かなアヌーク・エメとアニタ・エクバーグの美しさ!
今回のトラウマはキャバレーの道化っぽいおじさん。トランペット演奏後に、
床に散らばった風船を引き連れて退場。糸とかヒモとか見えなかったけど、手品?