guracolo docolo

摩訶不思議な guracolo ワールドへようこそ!

トラウマティック銀幕 ヴァンパイア

最近カール・ドライヤーにすっかりはまっている。
今回はトーキーだけど、そこはドライヤー。言葉よりも映像。
かなりいろいろ面白そうな実験をしているぞ。

<ヴァンパイア>

鄙びたクルタンピエール村を訪れたアラン・グレイ
船着き場近くのホテルに投宿。鎌を持った農夫が鐘を鳴らして船を呼ぶ。
夜、アランは眠れない。宿泊客の盲目の男の祈る声や他の物音に悩まされる。
そして、見知らぬ男が勝手に部屋に入ってくる。「あの子を死なせてはならん」
男は‘私の死後、開けること’と書いた包みを置いて立ち去る。
翌日、村を散策するアラン。廃屋に入ると、白い壁に義足の男や踊る人々の影。
そこから屋敷が繋がっていて、眼鏡の男と出会う。何か聞こえたかと問われ、
子供か犬の鳴き声と答えると、男は憮然としてどちらもいないと言う。
屋敷にはドクロやドクロ人形やドクロの印の瓶が置いてある。
霧の立ち込めるなか、ひとの影を追うように進むと大きな館がある。
昨夜部屋に来た男とふたりの娘、病気の妹娘を世話する尼僧と使用人たちが住む。
尼僧は男に娘の傷はほぼ治ったと告げるが、娘は血が欲しいとうわごとを言う。
アランは窓から覗いていると、銃で主人を狙う男の影が見える。
危険を知らせに駆けつけるも男は射殺されてしまい、悲嘆にくれる姉娘。
使用人たちの願いでアランは娘のそばにつき、男が遺した包みを開く。
中身は‘吸血鬼の歴史’という本だ。この村も数年前に吸血鬼に襲われている。
夜、妹娘が庭をさまよい、姉とアランが探すと、倒れている妹のそばに男が。
ドクロ屋敷で会った眼鏡の男だ。主治医だが姉は夜しか来ない彼を不審に思う。
医者に求められて妹娘に輸血したアランは不気味な幻想と現実のはざまに…。

白い壁に踊る影、霧にうごめく影、人体と別の動きをする影、幽体離脱、逆回転…、
死神のような農夫と鎌、盲目や義足の男、ドクロ、歯車、正体不明の音…。
見るものを不安や恐怖に陥れる仕掛けが研ぎ澄まされた美的感覚でなされる。
トーキーだけど音や音楽はコラージュ的で、セリフは必要最小限まで削られる。
今回のドライヤーは演技よりもあくまで映像。だから演者はほとんど素人。
主演のアランは怪奇好きの貴族でこの映画の出資者。でも、堂々たる演技。
今回のトラウマはヒロイン。妹思いで、美人で清楚ではかなげな姉だけど…。
どことなく挙動不審、アブナイ感じがするのは吸血鬼映画の見過ぎのせい?