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トラウマティック銀幕 人情紙風船

この映画を初めて観たのは、池袋の文芸座。古くて味のある名画座だったな。
そこの喫茶店でオムライスを食べた。味はあまり覚えてないけど、
ガラス窓に、今は亡き緒形拳の味のある文字が書かれていた。

<人情紙風船

雨上がりの朝の長屋に役人と目明しが駆けつける。住人の侍が首をくくったらしい。
死体を引き取る縁者がなく、長屋のみんなで通夜をやることに。
大家を口説いてちゃっかり酒代を出させるのは、髪結いの新三。
密かに賭場を開いては、やくざの親分である弥太五郎源七から痛い目に合わせられる。
そんな長屋には貧乏浪人の海野又十郎夫婦が住む。妻は内職に紙風船を作り、
夫は仕官の口利きを父の知り合いだった毛利に求めるが、忙しいと相手にされない。
毛利は家老の子息に質屋白子屋の娘お熊を輿入れさせようと画策中で、
うるさい海野を白子屋の店の者に頼み、源七の子分を呼んで追っ払わせる。
秘密の賭場がばれて一文なしの新三は、髪結い道具を白子屋に質入しようとするが、
番頭に冷たくあしらわれ、源七の子分からまたもや痛い目に合わされる。
そんな新三に格好の仕返しの機会がやって来る。お熊は実は番頭といい仲なのだ。
二人が揃って外出中、急の雨に番頭が傘を借りに行き、寺の軒先にお熊が一人佇む。
新三はお熊を連れ去り、隣の海野に頼んで隠す。ちょうど妻は里帰り中だ。
源七が脅しをかけても追い返し、ようやく大家が間に立って、新三はお熊を返す。
白子屋から大枚をせしめ、新三のおごりで長屋の連中はどんちゃん騒ぎの中、
何も知らずに又十郎の妻が戻り、長屋のカミさん連中の悪口を聞いてしまう。
「海野さんにはガッカリだね。悪事に荷担するなんて」
毛利から色よい返事がもらえると言うウソもばれ、酔っ払って眠る夫に妻は…。

情けない、甲斐性ない、意気地ない、生活力ない、ないない尽くしの又十郎。
とことん落ちぶれた夫に妻は、最後に潔い誇り高き始末のつけ方をする。
髪結いの新三は歌舞伎や落語なんかに登場するキャラクターらしい。
まさに反骨のロッカー。偉そうなもの、強そうなものをギャフンと言わせる。
たとえそれで痛い目に合おうとも、命を賭ける事になろうとも。
はかなく散った命をあらわす紙風船は、監督の悲運も暗示しているようで哀しい。
今回のトラウマは長屋の大家。身代金五十両から口利き代として半分も取る。
要領良すぎ!と言うか、実は一番のワルじゃないか?